ピアニストとして世界的に活動されている、フジ子・ヘミングさん。
超ザックリ!フジコ・ヘミングさんとは?
- 世界的に活躍するピアニスト。
- ロシア系スウェーデン人と日本人の母のハーフ。
- ショパンを弾くために生まれた、と音楽界から絶賛。幼少期より音楽の才覚を表す。
- 風邪により難聴になり、ほとんど聴力を失いながらも、現在も精力的にピアノ活動を続ける。
私が最初に彼女を知ったのは、大反響を呼んだあのNHKのドキュメンタリー番組です。【フジコ ~あるピアニストの軌跡~(1999年2月11日放送)】
当時私は母と一緒に偶然その番組を見ていて、番組が終わったあと「はぁ~(*°д°*)すごい番組だったね。あのピアニストの人すごいね!カリスマチックだね!」と騒いでいました。
あの番組で一気にフジ子さんは有名になり、活動を全国、世界規模にまで発展させ、現在もピアニストとして精力的に活動されています。
今回は7年位前に購入したフジ子・ヘミングさんの著書2冊をご紹介させて頂きます。
フジ子・ヘミング 運命の力
主にフジ子さん個人の価値観や生い立ち等が中心の自伝的な内容となっています。
自伝的といっても、無機質で固い内容ではなく、詩的で繊細な文章が印象的です。フジ子さんご本人の文章そのままかはわかりませんが、惹きこまる素敵なフレーズが沢山あります。
この本でフジ子さんが初めてNHKの番組で取材された時のエピソードと、それ以前と以後の変化が綴られています。
「遅くなっても待っておれ。それは必ず訪れる」
私は一夜で有名になってしまった。
以下略
人から理解されることはもうないだろうと思っていたから。信じられなかった。
ヨーロッパにいた頃、占い師に「あなたはいつか有名になる」と言われたこともあった。でも、そんなことは絶対ありえないと思ってた。
当時の放送は友達三人と家で見ていて、あっという間におわった。
その直後、NHKの人から「すごい反響です」と連絡が入った。
ちょうどその放送のひと月前に、私は近所の教会で、「聖書と典礼」という、信者のために作られているカードをもらった。
そこにはこう書いてあった。
「遅くなっても待っておれ。それは必ず訪れる」
もちろん、その言葉自体は聖書を読んで知っていた。
「知っています神様。でも神様、私のことなんかすっかり忘れちゃいましたね」ってそのカードをテーブルにポンと置いておいた。
それから、幾日もたたない内にNHKの人がやってきて、ドキュメントの話が決まった。
不思議としか言いようがなかった。
引用:「フジ子・ヘミング 運命の力」より
フジ子さんは、それまで自分が動物達と必死に生きてきたこと、ピアニストとして再起したいと、長い間情熱を持ち続けていたことを神様がわかってくださったからだと思う、と書かれています。
他にも心惹かれる文章は沢山あるのですが、あまり引用しすぎるよりも直接本をご覧になった方が感動が大きいと思いますので自粛しますm(__)m
文学、映画、バレエ、絵画が好き
文豪では芥川龍之介や島崎藤村が好きだったそうです。フジ子さん独特の感性は、文豪達の影響も大きいのかもしれませんね。
他にも映画とバレエ鑑賞が好きで、お金がない時代でも切り詰めて観に行っていたとか。アーティストになる前から、沢山の芸術に触れられていたのですね。
全体的にペシミスティックな雰囲気もあり、ポジティブシンキングを期待する人には不向きですが、なぜか癒され、励まされる読了感が好きです。
繊細でいてもいいんだ。弱い部分や失敗など、暗い面でも魅力だし、立派に誇りを持って生きていけるんだ、という肯定感と安心感を貰えます。
文章や写真が美しい「パリ編」もかなりオススメ!
2冊目のパリ編は、パリという町を舞台にした詩集+エッセイという雰囲気で読んでいてとても心地がよかったです。
主にパリでの生活模様を中心としたエッセイです。こちらも全ページ、詩的な文章がちりばめられていて、文字を読んでいるだけで癒されるし、心地良いです。パリへ行きたくなります。
私はフジ子さんのピアノだけでなく、絵やインテリア、ファッションのセンスにも惹かれます。
こちらの本も素敵な言葉が多すぎて、どれを引用されて頂くか迷いました。
カフェでぼんやりとタバコを吸いながら、空を見ているのが好き。
タバコの煙が空に舞って消えていく。
パリの青空は宝石のように美しく、凛として気品があるわ。
ヨーロッパの色々な空を見てきた。
この空の下にはたくさんの人生があって。
泣いたり笑ったりしながら、幸せを求めて生きている。
私もそんな一人。
生きるのに疲れたときは、ぼんやりと空を見あげると、
悲しみとつらさも空が吸い込んでくれる。
名もない路地裏のカフェで見た、空の色を思い出す。
もう一本タバコを吸ったら、
今日もまた、この空の下で自分の旅を続けるわ。
引用:フジ子・ヘミング「我が心のパリ」より
フジ子さんは昔ドイツに住んでいた時代から、度々パリへ訪れるのが楽しみだったそうです。
パリっ子の徹底した個人主義と無関心が心地よく、散歩中に出会える美しい住宅街の装飾や景色が大好きだったそうです。
私も昔パリに滞在していた時、お金があまりなかったので、友人とひたすらパリ市内と郊外を歩きまわっていました。
パリの住宅街や高台から見える景色の美しさは今も鮮明に印象に残っています。
散歩ってお金がかからず、誰にも迷惑もかけずに、感性を磨ける最高の運動ですよね。
今は横浜中心ですが、やはり歴史のある綺麗な街並みを散歩するのは最高の贅沢だと思っています。
フジ子さんはモルマルトル地区が好き
フジ子さんは、特にモンマルトルがお気に入りの地区だったようです。
モンマルトルの部屋で、ひとりピアノに向かう。
聴いているのは猫だけ。
心ゆくまで、ショパンやブラームスを弾く。
曲は同じでも、年ごとに理解が深まり、自分の世界が広がっていく。
白く美しい漆喰の壁に音がこだまして、
何もかも忘れ、私は無心に引き続ける。
曲のドラマの世界に分け入って、
いつか、
パリにいることも忘れてしまう。
好きな画家
フジ子さんご自身も絵を描かれていますが、好きな画家はゴッホ、モジリアーニ、ユトリロだそうです。
パリには有名な画家がたくさんいるけど、
ゴッホやモジリアーニ、ユトリロなんかが好き。
みんな、生きるのが下手で、純粋だった。
ユトリロはモデルの私生児だったし、ゴッホは自殺した。
モジリアーニは貧困の中、結核で死んだ。
みんな、パンも買えないのに、絵を描き続けたんだから、凄いと思う。
中略
彼らは貧乏だったけど、心まで貧困じゃなかった。
だから、みんなあれだけの絵が描けたのね。
心まで、お金に負けてしまったら終わり。
苦労に押しつぶされない、自分だけの夢を持たなきゃだめ。
他にも本当に心に染みる文章が沢山ありました。
購入してから7年以上たつので、今ではあまり読み返しませんが、たまにパラパラめくりながら、気になる文章や美しい写真や絵に癒されます。特にこのパリ編はオススメ。
フジ子さんの恋愛観、好きなタイプ
フジ子さんは繊細で教養があり、ノーブルで粋な男性が好きだそう。
ノーブル部分は半分幻想だと理解しつつも、自分側への損得勘定ではなく、純粋な気持ちで動ける人を尊敬されているそう。(かつては音楽家、レナード・バーンスタインに恋をしていたそう)
「愛している」なんて言いながら、自分にとって都合のいい相手の行動を求めているだけ、という心が透けて見えると一気に幻滅してしまいますよね。
まとめ
偽善や欺まんといった嘘がなく、不器用だけど、誠実に人生を生きてきたフジ子さんの人間的魅力が溢れる2冊でした。
本業のピアノも素敵ですね。コンサートにもぜひ行ってみたいです!